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バポの話 スニマンアラム編その6

プナプナ135号 (2004年11月16日発行)


ボロボロ最悪で悔しかったアルサデビューの話はまだ続きがある。
この日は「何故踊るのか」という究極的な問いかけが頭の中をぐるぐるしていたのだが、
まあそっから派生したあれこれがさらに湯水のように沸き出してきて、
日頃頭を使ってない私は知恵熱出すんじゃないかくらいの頭脳エネルギーを消費した。
出さなかったけど。

そんなこと知るはずもないバポは、踊り終わった私にな・な・なんと!!もうほんとうに、
ほんっとうに人生で2番目くらいにびっくりしたんだけど。
お金をくれた。
金弐千ルピア也。
畏れ多いのでこう書きたくなる。
もったいなやもったいなや。
2000ルピアあればナシブンクス(ご飯とおかずを紙に包んだもの)なら2食分、
ピサンゴレン(バナナフリッター)なら10コは買える。


「さっきバポがいっぱいもらってたの知ってるだろ。いいんだ。とっとけ。」
「そ、そんな。バポ。受け取れませんって。ご冗談でしょ。お納め下さいまし~。」
と訴えたのですが、全然聞いてない。
一緒に踊らせてもらえるだけですごい事なのに、しかもあんなひどい出来で・・・。
もらえないって。


 私はそれまでひとつ守ってきた自分なりの考えがある。
この前も書いたけど、バリ人じゃない私はもちろん異教徒。
なので、バリで踊ることについては遠慮するのが私のやり方、と思ってきた。
それまでに、数は多くないけど誘われた時はお断りしてきた。
それを破ったのは、他でもないバポの指示、指示じゃない、あれは命令。
そう他でもない「神様」バポの命令だったからだ。
彼の前で「ノー」と言うことはできなかった。
ただでさえ、自分の禁を破って後ろめたい気分なのに、お金までもらってしまった。

(だめだぁ~。こっちが払いたいくらいなのに。
このお金で明日サリに何か買っていこ。ワルンでジャジャンでも買おうっと。)

「サリ」とは一緒に住んでいる娘さんで、勤めに出ながらバポの身の回りの世話を一手に引き受けている働
き者。
お嫁さんいるんだけど、サリがいないとこのうちは回っていかない。
せめて旦那さんが働きに出てくれたらサリはもっと楽になるだろうに。

サリは食いしん坊。
おいしいもんでも買っていこ、と何買ったか忘れたけどそれを持ってトントンと部屋の戸をノック。
サリが出てきた。
不審気な顔。眉が曇っている。
「サリ、これ食べてね。」と渡すとその眉が一度に晴れた。
にっこり笑って受け取ってくれた。
まあ、これが結構私は嬉しかった。
サリの笑い顔は滅多に見たことなかったから。
で、後ろめたい私の気分も少しは晴れたっていうお話。
もう少し後ろめたさに甘んじるべきだったが・・・。


…つづく。
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