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バポの話 スニマンアラム編その5

☆プナプナ133号 (2004年11月2日発行)

突然のアルサデビューは夜ではなく、昼間の結婚式だった。
初めてなので、お嫁さんのダユが付き添ってくれ、心強かった。
招待客でごった返す屋敷の一角、小さな一棟に通されるとすぐにバポと共に準備を始める。
それまでに何度もバポの舞台に付き添っているので手順はあらかたわかっているが、自分が踊るとなると話は別だ。
一応衣装をつけ、あとはタパル(お面)とグルンガン(冠)をつけるだけにして待機。
既にバポは棟の外で踊り始めている。

いつ出ていくんだろう・・。
曲がアルサに変わるからわかるよねと思いながらもかすかな不安がある。
外でノリノリで踊り語っているバポ。う~ん、いつ?と待っている私。
何々?何か私のこと言ってる。
変な日本人が出てくるから期待しろ?観客笑った。ウケてる。
いつも楽しませる事を忘れないバポ、エンタテイナーだなぁ。
あ、手招きしてる。出ろってこと?まだタパルつけてないってば。
ダユが慌てて手伝ってくれ、私が出るまでつなぎの音で待っていたガムランが突然アルサの曲になる。
きゃーいつも突然なんだからバポは~。
踊り出たはいいが、ん?音が・・音がぁぁぁ~。途中から違う。
えっ?
は?
ジェンジェンジョローンじゃない。
音が違うことにとまどって後半は最悪。
何とか立て直して終わるという結末。
バポはカウントだけ考えればいいと言うが、メロディーが違うのにどうするのか。
速くなって欲しいところでならないし、だから回れなくて音待ってたら「回れ」とバポに言われるし。

ようは場数ということか。
終わって悔しかった。
考えてみれば、どんな音でも、ランスンムナリが本来の姿だから、場数でしかない。
ランスンムナリとはどういう事かというと、バリで踊る時っていうのは、ある種の公演を除き、何回も事前にガムランと合わせる練習をして本番に備えるなどという手順は踏まず、直接その場に行ってその場で音と合わせる一発本番でしかないっていうこと。
次から次へとバポはハードルを作ってくれる。

なぜ踊りの稽古をするのか。なぜ踊るのか。
バリ人の場合目的は一つ。こういう形で、生活の中の色々なウパチャラ(儀式の事)で踊れること。
終点はそこだ。
もっとも、生活の糧を得るためという側面も忘れてはならない。
バポは必ずふんだんなバンテン(供え物)とその中に幾ばくかの現金をもらっている。
この2週間で4回もあった。
スニマン「アラム」の「アラム」という言葉が実感できる。学ぶべきものは学校ではない。
こういう学び方が本当なんだ。とバポははっきり言った。 

          つづく・・・。
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  1. 2012/06/29(金) 22:48:50|
  2. バリ、インドネシア
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