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バポの話 スニマンアラム編その4

☆プナプナ132号(2004年10月26日発行)

何回も繰り返して音をなぞっていると、
ああ、ここの音でこの動きなんだろうなあと流れの中で大体の目安がついてくる。
たぶんこれが左右にまわりこむ前の伸びる時の音なんだろうな。
ああ、だけど後ろ向きで首つけるとこの始めの音がわからない。
これかな。
などと探りながら一人でずっとやっていく。
サラッド(祭りの時などに使う竹で作った大きめの飾りもの)作りをしているバポに見えるところでそういう「探り稽古」をずっとやった。

「質問する」ということはある程度ポイントが定まっていないとできない。
よく、「どこがわからないかわからない」という生徒さんがいる。
本当にそうだと思う。
質問できるようになるまでに時間がかかるのだ。

だから、バポに聞けるようになるまで一人で「探る」作業が続いた。
横で稽古している私があまりもたもたしてるので、見るに見かねて
「あっ!!ちがう。こうだ。」
とやって見せてくれることもあったが、迷っていたり気づかなかったりするところを、先回りして自分が聞くより前にそう教えてくれる時はすごく嬉しかった。

いつも、(ああもう少しチョントが欲しいなあ。そうすればできる自信あるのに・・)
そう感じたことはしょっちゅうだったが、それがバポのやり方だからと思って従っていた。
あ、チョントとはお手本のこと。
少しずつ謎解きしていく過程は、大海原に島がぽつぽつとでき、さらにそれがつながって陸地になっていく。
最初海に放り込まれた時はアップアップでおぼれそうだったのが、段々島を見つけて泳ぎつくようになり、
時には隣の島へ歩いて行けるようになり、その隣の島にも歩いて行けるようになり・・
そんな感じだった。

ある日、バポはこういった。
「おまえは牛で、バポはゴパラだ。もしおまえが馬でバポが馬引きだとしたら、バポは馬の前を歩いていつも引っ張るだけ、そして馬は後ろからついて行くだけだ。」
「だけどな。バポがゴパラでおまえが牛ってことは、牛はずっと目の前に放し飼いにしてあるからいつでも見えるだろ。その方がはやいんだ。」
はい、そのやり方についていきます。
でも、さっき通して見せてくれたチョント、思ってたのと全然違っててがっくりです。
その方がはやい?ホントかなあ・・一歩進んで二歩下がる。
踊りながら寝ろと今日も言われた。
そうします。
明日はタパル(お面のこと)つけてやれって言ってたなあ。
はぁ。

次の日、初めてタパル、グルンガン、バドン、サンプルつけてやる。もちろん細々したことは何も言わな
い。
ぱっとつけて「ほれ、やってみろ。」
タパルのせいで、見えない。
息苦しい。
バランス感覚が狂う。
バドンが大きいのでアングッをしてもつっかえて、してるように見えない。
それでも数カ所注意してくれてあと一人でやれ。
ある時から「中でやれ」と言うようになった。
「中」とは鏡の前でということだ。
洗面台についている鏡から遠く離れると、かなり自分の姿が映るのだ。
衣装をつける稽古の頃になると私の踊りに「cukup」(十分だ)と言うようになった。
自分はまだ全然なのに。
そんな頃、「明日踊りに行くぞ」とバポ。
私は困った。
今まで、バリで踊るのは「異教徒だから・・」と断ってきたからだ。

・・・つづく。
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  2. バリ、インドネシア
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