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バポの話 スニマンアラム編その3

☆プナプナ131号の後半 (2004年10月19日発行)


次の日。
「行くぞ。」「録音機もってこい。」
どこへ行くのかと思ったら歩いて5分の息子のうちへ。
ここはサンガル「パリプルナ」という名前の本格的な稽古場があるのだ。
もちろん、ゴンクビャールのセットも一式置いてある。
この時は毎日子供達の強化練習(アートフェスティバルのため)が行われていて、
夕方になるとあっちからもこっちからも蒼々たる大人の舞踊家音楽家が集まって子供の指導をしているのだった。
(この話はまた後日)

バポはガムランの前に座ってアルサを奏で始めた。
三々五々やってきた大人達がこれに加わる。
(ああ、これを録音しろということね。偶然録音機持ってきてたからよかったけどなかったらどうするつもりだったんだろう。それにこの録音機、かろうじて音拾えるくらいのすごーく性能悪いシロモノなのになあ。うまく録音できるんだろうか。)
不安をかかえながらもやるしかないので演奏を聴きながらどこが録音に最適な場所か探す。
少し入れては聞き、場所を変えて同じ事を繰り返し、でもなかなかうまい具合に音が入らない。
そうこうするうちに「おい、やるぞ。おまえも後ろで踊れ。」とバポ。
「はい。」
と言って生演奏で動き始めたバポについて一緒に踊り出す。
全然ついて行けない。
だって全部やるのほとんど初めて。
でも2回くらいやり、いよいよ本番。
「録音用意いい?」ガンサのリーダーが私に聞く。


終わって聞いてみるときけたもんじゃない。
(だから、この機械じゃ無理だってば)
でももう一度場所を変えてやり、なんとか聞けるものが録れた。
ふう。
これで音源が手に入った。

とにかくカセットが手元にあってそれを聞けばいつでも稽古できることがこんなに嬉しいものかと初めて思った。

次の日は「ウチャパンを覚えろ」ウチャパンとは語りのことだ。
仮面舞踊には語りがつきものだ。
私たちが仮面舞踊を見る時は演目だけを切り離して見ているので、なかなかそれらが一続きのものだとはわからない。
「ポガ サモ イグルーン リン パドヤマミー・・・」
とタイプで打って私に渡そうとして打ち始めたのだが、
これは10万年かかるとわかったのか、
「おい、今から言うから書き取れ」
と方向性をチェンジ。
苦労して書き取る。
そのあとウチャパンの部分の動きをやってくれて感激。
昨日通して踊ったこの部分がウチャパンのところだったのか、
なるほどそういう動きになってるとわかって再び感動。

さあ、これからが稽古だった。
といってもほとんど一人。
もう、従来型の教え方じゃないとわかっていたので、それからは一日のほとんどを中庭で過ごした。
で、カセットをかけながら一人稽古するのだ。
もちろんできないことだらけ。
記憶の片隅に残っているバポの動きを思い出しながらなぞる。
バポは自分の用事を色々しながら時々見るに見かねて私の踊りにチェックを入れる。
すると一日に一カ所ずつくらいわかるところが出てくる。
時には自分からここがわからないと聞く。
聞いた時には必ず教えてくれるのでもうこれ以上集中できないというくらい一生懸命見る。
それをやってみる。
の繰り返し。
本当に一日一カ所だった。

つづく・・・。
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