「月食のあと」平山素子新作ソロ公演(その1)

この舞台を2日で3公演って、いったいどんなスーパーボディなの?!
今日はたぶん書き出したら止まらない。

やった。一番前ひとつだけ空いてた。
隣の席は小学生の女の子。お父さんと来てる。奥さんに頼まれたんじゃない雰囲気がある。
いいねーこういう上質の舞台を小さい時から見せるって。
さ、いつものように登場予想しよっと。
(上手から音もなく。顔を隠している。背中だけもあり。)だな。

パンフ読もっと。
(え~!!私の憧れの地、神岡鉱山のスーパーカミオカンデじゃん!この照明!)
なぜなら、パンフ中に
「舞台上のLEDスクリーンの光は人工的にプログラムされているものではなく、宇宙の彼方から飛来する宇宙線をシンチレーターで検知し、リアルタイムで光に変換しているのです。ここで使用しているシステムは岐阜のスーパーカミオカンデに類似したものです。」
と書いてあるではないか。
(シンチレーターって?宇宙線を光に変える装置らしい。)
(とにかく照明が宇宙線でできてる!)
(どんだけ月食チックなの。)
(こんな照明作る人日本にいるの。はあ~。これだから生きてるのは楽しい。)
なにしろカミオカンデと聞いただけで小躍りして喜ぶ癖のある私としては、
もう始まる前から舞い上がっていた。
だって、のっけから神岡鉱山だもん。それも平山さんの舞台でだよ。テンション上がる上がる。

始まった。
見事に裏切られました。
それが「足」だとわかるのに時間がかかったくらいの裏切り。

下手からのスポットに浮かび上がるのは足先だった。

足先から頭までが究極の角度姿勢で(だって身体と床との角度がくっきり鋭角ですから)
それも「音もなく」どころか、大音量とともにその角度をキープしながらゆっくりと登場。
美しい横顔の一部分だけが照明に浮かび上がってそれ自体がもう食を受けている月のよう。
衣裳の裾にかけていい感じでグラデーションがきいてる。
(これ、アフタートークで知ったんだけど、照明あてて今イチって事で染め直したんだそうだ。)


しかし、失われることって欠けていく月に象徴されるかのようになんか不安なんだな。
相変わらず音楽じゃなくて使われてるのは「音」だし。
おまけにバックは宇宙線照明だし。
背中で踊る平山さん。
この辺り、かなりの不安感にゾクゾクした。

日本人ってやっぱり滅びゆくものに何かを感じるよね。
そこに美学を感じる国民性、自分もそうだし。
やや思考が飛ぶけど、レゴンラッサムがあれだけ人気あるのも同じアジア人として
バリ人の感覚に通底するものがあるのかもしれない。
だって負け戦になるのわかってて突き進むんだからねラッサムは。

静寂のあとは昆虫になった。
段々に満ちてくる月の光を受け、身をわなわなと震わせて脱皮する虫であり私であり。
再生の兆しだ。
音楽が流れ始めた。
月食は必ず満月だから、完全な闇は完全な光に置き換わる。
激しく踊る平山さんの身体から滝のような汗が流れ、飛び散り、
(あんなに激しく動いて、汗ですべらないかしら。あ~ハラハラする。)
(いや、やっぱりすごい人は滑らないのだ。そんな事計算して踊ってるに決まってる。)
感動中なのに分析癖が出て、つい
(その振りの次にそう来るんだ。面白いナー。)と思ってしまう。
だって、コンテンポラリーはその意外性が好きなんだもん。
バリ舞踊は型の踊りだから、動きにそれ程大きな変化はないし。
あ、こういうと誤解を招くといけないので、あくまでもこういうダンスと比べて
っていう断りを入れとかねば。
バリ舞踊は本質的に抑制を効かせた踊り。こういう発散型の踊りは動きのバリエーションが豊富。
だから「そう来たか」って感じが楽しくて仕方がない。
でも、同じくらいの強さで抑制の効いた踊りも好きで仕方がない。

途中で、LEDの壁の向こう側にスッと入っていったところ、素敵な不意打ちだった。
すごく良かった。
自分の舞台でも不意打ち演出をひそかに仕込みたいと思う。

それにしてもすごい運動量と身体能力だ。
アフタートークで「長年踊ってきて何か前と違う変化、それは失ってきたものや消えたもの。
でもその中から得たものにフォーカスして作品を作った」と云われていた。

失うことや消えることがネガティブだとは限らない。
まあ、時にはそういうこともあるよ、だーだーに失いっぱなしってことも。
だけど、まんざら失う一方でもない。失うから拾う事もある。
自分を振り返ってみても、数年前とは身体がだいぶ変わってきている。
何時間踊っても平気なんて時代は去った。
でも、というか、だから今、新しい何かを求めている自分がいる。
それに、今じゃなきゃわからない事もある。

ちょっと横道にそれたが、宇宙照明を含む照明がとても良かった。

しかし、最後のLED付き衣裳、それゴメンなさい「人間クリスマスツリー」にしかみえないです。
だって、暗闇でどんなにいい踊りしても光が蠢いてるだけだもん。
しかし、この件に関してはその2に続くのだ。





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